毎日のねむりを、もっと良いものに。香りのプロフェッショナルに聞く「香りのデザイン」とは
上質な「睡眠」は、日々の健康と美容にとって欠かせないもの。とはいえ、「なかなか寝つけない」「つい夜ふかしをしてしまう」という人も多いのではないでしょうか。今回はそんなお悩みを解決するべく、香りの専門家であるアロマ調香デザイナー®の齋藤智子さんにお話を伺いました!
プロフィール
齋藤智子さん
TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO主宰/アロマ調香デザイナー®
一般社団法人プラスアロマ協会代表理事
京都で10代続く家に生まれ、幼い頃から親しんできた白檀の香りに魅かれて調香の世界へ。
15年間で創作した香りは6,000種以上。天然精油にこだわり、国内外で企業やホテル、ブランドなどのアロマ空間演出を手がけるほか、美術館での創香などアート分野の企画も多い。
著書『アロマ調香デザインの教科書』(BABジャパン出版)、『暮らしの図鑑 香りの作法』(翔泳社)
公式サイト http://ts-aromatique.com
香りを「デザインする」ということ
アロマ調香デザイナー®として、幅広い分野で活動されている齋藤智子さん。化粧品などのプロダクトからホテルや商業施設の空間まで幅広く、天然の精油を使って香りをデザインされています。
「『アロマ調香デザイン®』とは、アロマテラピー※をベースに、目的に適う香りをデザインすることです。合成香料と違い、天然の精油には鎮静作用や抗菌作用などの機能があります。精油の香りと機能を踏まえ、その香りを使う人や場所に合わせて、何種類もの香りを重ねて調香していきます」
※植物から抽出した香り成分である「精油」を使って、美と健康に役立てていく自然療法
「リラックスしたいときに『ラベンダーの香りが良い』ということはよく知られていますが、実は『ラベンダーの香りが苦手』という方も多いんです。そんなときは、ラベンダーにオレンジの香りをプラスすることで、スッとかぎやすくなる。人によって『良い香り』と感じられるものは異なります。目的や好みに合わせてより細かく調香していくことで、もっとその人に寄り添うことができると考えているんです」
人それぞれの好みや気分、体調に合わせて、あるいはその香りを使う場所の目的や世界観に合わせて香りをつくりだすこと。それが「香りをデザインする」ということなんですね。
日々の暮しの中に、香りを取り入れる方法
アロマディフューザーやアロマストーンなど、おうちで精油の香りを楽しむ手段は増えています。「これからアロマテラピーをはじめたい」という場合、何から手をつけたらよいでしょうか。
「まずは『どんな香りがあるのか』を知っていただくこと。お気に入りの精油をいくつか持っていれば、いつでも手軽に心と身体のケアができます。鼻が詰まっていたらユーカリの香りをかぐ、喉の調子が悪ければティーツリーをティッシュに垂らして持ち歩く。そんなふうに少しずつ取り入れていくことで、いつもの暮しがちょっと快適になりますよ」
コーヒーの香り、雨の匂い……普通に暮しているだけでも、人間は毎週1,500〜2,000種類の香りをかいでいるといいます。
「たくさんの香りの中から、まずは自分にとって気持ち良い、リラックスできるような香りを3つくらい見つけてみましょう。香りには自律神経に働きかける効果があります。自分ではなかなかコントロールできない部分を、香りで調えていくことができるんです」
一方で、香りの好みが変わった、なんとなく習慣として定着しない、などの理由で、せっかく購入した精油を使いきれないまま数年が経過……という方も多いのではないでしょうか。
▲精油の香りを気軽に楽しめる、TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIOオリジナルのムエット
「ポイントは、自分にとって面倒にならない使い方をすること。香り用の器具を使わなくても、ティッシュに垂らして置いておくだけでも十分なんです。ディフューザーや芳香剤の香りが『ちょっとキツイな』と感じる方でも、1、2滴の精油ならほどよく香ってくれますよ」
バスタイムからはじめる「ねむりとかおり」
一日の中のさまざまなシーンで、いろんな役割を果たしてくれる「香り」。では、良い睡眠のためには、香りをどのように活用したら良いでしょうか。
「良い睡眠には、バスタイムが欠かせません。浴室で精油を使う場合は、排水口に1、2滴垂らしておくと、お湯が流れるときに温められて、香りが立ちのぼってきます。小さなお皿に垂らして置いておくだけでもOKです」
おふろでゆったりリラックスすることで自律神経がゆるんでいき、香りはその手助けをしてくれます。カモミールティーなどのハーブティーも、同じように安眠をもたらす効果があるそう。リラックスした後は、いよいよ寝室へ。
「寝るときにぴったりの香りといえば、ラベンダーとオレンジの組み合わせ。他にも、サンダルウッド、ベルガモット、ヒノキなど、リラックス効果や鎮静作用のある香りはたくさんあるので、ご自分のお好きな香りを選んでください。ティッシュなどに少量の精油を垂らし、枕元やベッドの近くに置いておきます」
眠っている間も嗅覚は働いているので、フワッと漂う程度の香りでも、目覚めたときの気分に働きかけてくれます。齋藤さんご自身の「ねむりの儀式」についても伺いました。
「その時々で欲しい効能に合わせて香りを選んでいるので、寝るときも同じ。『今日は疲れたな』というときには、自分が癒される香りをかいでいます。旅先などで寝付けないときは、ラベンダーなどの精油をホテルのお部屋の水回りに垂らしておくことも。夜はベッドサイドに暖色系の調光できるランプを置き、朝は太陽の光を浴びるようにしています」
自分にとって心地よい生活リズムを調えるために、自然の香りや太陽光が大事な役割を果たしているんですね。
自然の香りで、自然な自分を取り戻す
「天然の香りで、調える」 というコンセプトのもと、アロマ調香デザイン®のプロフェッショナルチーム「TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO」を始動させた齋藤さん。2023年6月には、その発足の発表とともに、産地や生産者から厳選した和の香り“5 Signature Scents"を体感できるイベントが京都・両足院で開催されました。
▲新製品の発表イベントが開催された京都・両足院の会場風景
「石、水、土など、そういった自然のものが、私の香りづくりの原点です。精油は植物から抽出するものですから、農作物と同じで、同じ産地の同じ精油でも、完全に同じ香りにはならない。その年の雨の量や日の差し方で全然違ってくる、それが自然であるということなんです」
齋藤さんがつくりだす香りは、出身地である京都の、日本の伝統的な香りがベースになっています。大事にしているのは、自然そのものの香りを最大限生かすということ。
▲厳選された日本古来の5つの香りが揃う「5 Signature」
「日本は木が多い国。日常生活の中で木の匂いをかいでいて、その香りを記憶しているんです。そうすると、ヒノキなどの木の香りをかいだときにどこか懐かしいような感覚がして、スッと受け入れやすい。『香りが苦手』という方でも、そんな親しみのある香りをベースにすることで、香りの世界観をさらに広げたり、目的に合う香りをつくっていくことができるんです」
自分にとっていちばん心地よい香りで、心身の状態や暮しのリズムを調えていく。香りを上手に活用して、良い「ねむり」をつくっていきたいですね。
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