睡眠のプロが教える!毎日のおふろで心と身体を上手にリカバリーする方法

ぐっすりねむった翌朝の気持ちよさは格別ですが、良質な睡眠を取りたいと思っていても、毎日の生活リズムや習慣を変えるのはなかなか難しいもの。実は睡眠環境を整えるのに、大きな力となってくれるのが毎日の入浴。ねむりのプロが実践する入浴法について伺いました。

プロフィール

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小林 麻利子さん
公認心理師。睡眠改善インストラクター、SleepLIVE(株)代表。JCSP日本睡眠改善カウンセリング主宰。科学的根拠のある最新研究を基に睡眠個人指導を行う。第32回日本睡眠環境学会奨励賞受賞。個人指導で得た知見を基に、マンションやホテルの睡眠空間提案を行う。近著に「小林式マインドフルネス入浴法」(MdN)。テレビや雑誌等メディアでも多数活躍中。

公式サイト https://sleeplive.jp

質の良いねむりで知った、自律神経を整える大切さ

最高のねむりを得るために、生活習慣や食生活、住環境など、さまざまなアプローチから取り組みを続ける小林麻利子さん。主宰するJCSP日本睡眠改善カウンセリングでは、全国で睡眠やメンタルにお悩みの方へ、所属する公認心理師から、自律神経を整え、生活全体を底上げするお手伝いをしています。

いまの仕事をスタートしたのは、小林さん自身の体調不良がきっかけでした。

会社員時代、過労で倒れてしまったんです。振り返ってみると圧倒的な睡眠不足で、おふろにゆっくり浸かることもない毎日でした。
あるとき、たまたまアロマテラピーの存在を知りました。試してみると深く呼吸ができて、その夜は気持ちよくねむることができたんです。翌朝は頭がすっきりして、なんだか様子が違う。これはいいかもしれないと毎晩続け、4日目の朝。起きた時、世界の見え方がガラリと変わったのを感じました。のどのあたりを締めつけるような痛みも取れ、呼吸もしやすい。睡眠ってこんなにも大切なんだと実感したのが、この仕事を始めた原体験です。

その後、より専門的な研究や解剖学や心理学などさまざまな学びを経て、自律神経を整えることが健やかに暮す根本だと知った小林さん。さらに掘り下げていくことで、睡眠と入浴の重要さにたどりついたのです。

img02 寝る前にアロマキャンドルを灯す人も(撮影 mukuさん)

おふろは「身体と脳と心」のリカバリースポット

入浴の役割は、身体を洗い清潔を保つだけではありません。お湯に浸かって身体をほぐしたり、リラックスしたり、そんなふうに過ごしている人もきっと多いでしょう。

おふろにゆっくり入ると、脳と身体がリカバリーされます。入り方を工夫するだけで、深部体温(脳や臓器など身体の内部の温度)や自律神経をコントロールできるんです。

一方、心のリカバリーを上手にできる人はまだまだ少ないのが日本の現状かもしれません。湯船に浸かりながら、その日あったことを思い出したり、ああ失敗しちゃったな、どうしてあの時あんなこと言っちゃったんだろう……などと、考え込んだりしたことはありませんか? 感情があちらこちらに散らかった状態になると、心のリカバリーができず、小さなモヤモヤが積み重なってしまいます。

おふろで身体と脳、そして心もリカバリーするために、わたしが実践しているのが『マインドフルネス入浴法』です。

おふろで心をすっきり!ねむりの質が向上するマインドフルネス入浴法

img03 湯船に浸かることで、身体が芯から温まります(撮影 pooさん)

マインドフルネスとは、「いま、ここで起こっていることだけに意識を集中させること」。つまり、仕事での失敗やその日のモヤモヤ、明日やらなければいけないことなど、無意識に頭の中はいっぱい。意識があれやこれやと移ろいでいる状態です。
「でもいろいろと考えていることは、否定しなくて大丈夫。目の前にある何かに、自ら意識を向けるだけでOKです」

裸の状態で過ごすおふろは何にも邪魔をされず、マインドフルネスにぴったりの環境です。

頭を浴槽のふちに預けて、お尻を前にずらして、手をぷかーっと浮かせましょう。そして一度、口から息を吐き出します。鼻から息を吸うと浮き輪のように身体が浮かび、吐き出すと沈みます。まずは浮くこと、沈むことに意識を向けてみてください。

呼吸が難しければ、チャプチャプと手のひらに当たる水の感触を味わう、という方法も。水の動きや水滴のぶつかりなど、わずかな感覚を感じ取ろうと集中します。ただひとつのことに意識を向ける、それがマインドフルネスです。

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頭の中にうずまく考えや感情を客観的に観察しつつ、今目の前にあることを意識的に感じること。そうすると、忙しく疲れた気持ちが楽になり、リラックスできます。おふろの中で心のリカバリーができると、深くねむれるようになり、翌日の集中力も高まりますよ。

女性は排卵から〜月経前までの時期(高温期)には深部体温が下がりにくくなるため、寝つきの悪さを感じる人も。そういった身体の周期に合わせて、マインドフルネス入浴法を取り入れるのもおすすめです。

しっかりと休息をとって次の日に備えるためにも、ただ「入浴する」だけではもったいない!毎日のおふろ時間を活用して、心と身体のメンテナンスをしていきたいですね。

ノーリツが考える睡眠

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