睡眠改善インストラクターに聞いた、最高の自分になれる睡眠環境の整え方
心と身体の疲れをリセットするための「マインドフルネス入浴」を提唱されている、公認心理師、睡眠改善インストラクターの小林さん。今回は、おふろの時間をさらに有意義にする方法を教えていただきました(前回の記事はこちら)。寝る前のルーティンを見直すことで、翌日の自分の変化を感じてみませんか?
プロフィール
小林 麻利子さん
公認心理師。睡眠改善インストラクター、SleepLIVE(株)代表。JCSP日本睡眠改善カウンセリング主宰。科学的根拠のある最新研究を基に睡眠個人指導を行う。第32回日本睡眠環境学会奨励賞受賞。個人指導で得た知見を基に、マンションやホテルの睡眠空間提案を行う。近著に「小林式マインドフルネス入浴法」(MdN)。テレビや雑誌等メディアでも多数活躍中。
公式サイト https://sleeplive.jp
おふろをエンターテイメントにするアイデア
前回の記事では、睡眠のプロである小林麻利子さんが提唱する「マインドフルネス入浴」についてご紹介しました。良いねむりのためとはいえ、毎日続けるのはなかなか難しい……と感じる人もいるかもしれません。今はスマホを見ながら入浴する人も増えているようです。これは、あまり良くないことなのでしょうか?
おふろにスマホを持ち込むのは、リラックスを考える上では、もちろん避けたいところですが、必ずしも悪いことではないんですよ。わたしも、おふろでドラマを見ることがあります(笑)。リビングでスマホを見続けておふろに浸かる機会がなくなり、シャワーで済ましてしまいがちな方よりも、スマホを持っていって湯船にゆっくりと浸かる習慣をとっている方のほうが温熱作用が高まり、その結果、ねむりの質が高まる可能性があります。おふろに浸かることのハードルが高いなら浴室にスマホを持ち込んで、まずはおふろに浸かる習慣を取り入れましょう。
ただし、使用方法には注意が必要とのこと。
頭を浴槽の淵に預けて、だらーんと身体を脱力させたうえで、スマホスタンドなどにスマホを置いて、指先は使わないようにしましょう。そのため、SNSを見るよりも、映画やドラマなどを見る方がいいですね。天井の照明は消して、スマホの照度も暗くして、ゆったりと呼吸を繰り返しながら、見るようにしましょう。
また、おふろから上がったあとは就寝になるので、副交感神経を優位にする(身体をリラックスさせる)ためにも、おふろから出たあとも、ゆったりと口から吐いて鼻からゆったりと吸って、深呼吸しながら過ごすとよいでしょう。
おふろのあとも、もうひと工夫。おやすみ前の全身モニタリング
身体を心地よく延ばすストレッチ
マインドフルネス入浴でゆったりと心をほぐした後は、寝室で横になり、自分の身体の状態をチェックします。
おふろ上がりに身支度して汗がひいたら、身体を脱力させ、リラックスして過ごしましょう。ベッドに仰向けに寝転んで、全身の筋肉をゆるめていきます。まずは顔から。人間は口が少し開いた状態が、自然な脱力の姿です。キュッと口を閉じて口角を上げているときは、力が入っていますよね。
同様に、眉間のシワや奥歯の噛み締めなど、意識的に表情をゆるめ、身体の力を抜いていきます。次に、身体の中に力が入っているところがないか、ゆったりと呼吸を繰り返しながら、足から頭の先まで探っていくんです。顔でも身体でも、力が入っていると感じたら、一度そこに力をぐっとこめて、そのあとふっと力を抜きます。筋肉を緊張させてから、弛緩させる。こうすると力の抜き方がわからない方も、脱力のコツがつかみやすいと思います。
ちなみに、おふろと就寝の間に、仕事や外出など別の用事を挟むのは、良質なねむりのためにはNG。
おふろで一時的に上昇した身体の深部体温は平熱に戻り、その後、平熱よりもさらに下がっていきます。深部体温が下がりつつあるタイミングでベッドに入ると、深く、長く眠ることができるので、おふろと睡眠は必ずワンセットを心がけてくださいね。
良質なねむりの目的は、最高の自分に出会うため
健やかに過ごすために欠かせない、毎日のねむりと入浴。その根底にあるのは、子どもの頃から当たり前のように言われてきた「規則正しい生活」がありました。
ねむりの質を上げ、気持ちよく毎日を過ごすためにも、ぜひ食事と入浴、就寝時間を一定にすることを心がけてみてください。基本的な生活リズムが毎日バラバラだと自律神経が整わず、その結果、偏頭痛が起きやすくなったり、オンとオフの切り替えがうまくいかず日中もぼんやりしてしまったり、自分のパフォーマンスを十分に発揮できません。
しっかりねむった翌日は、脳が覚醒しやる気が生まれ、集中力が高まるので働き方にも変化が見られるそう。メンタルが安定する効果も期待できるため、ちょっとしたことで傷ついたりイライラしたりもしなくなると言われています。
最終的な目的は、ねむりの質を上げることではなく、翌日、最高の自分に出会うこと。良質なねむりは、心と身体の健康にはもちろん、お肌の調子や体型にも影響します。化粧品の質や過度な食事制限に気を配る前に、まずはねむりを見直してみてください。
そして入浴は、そのねむりの力強いサポーターです。毎日の入浴が、その後の7時間の睡眠に影響し、翌日は最高の状態をつくってくれる。すばらしくコストパフォーマンスのいい健康法だと思いませんか?
ねむりも入浴も、食事と同じくらいあたりまえの習慣。毎日のことだからこそ、小さく変えるだけでもその成果は大きく変わりそうです。ぜひ今夜から、おふろの快眠効果を実感してみてくださいね。